海の仲間たち(Ⅱ):群れ・ヒッチハイカー・楽園
やんばるの森通信 抜粋記事
今から10年前、国頭ツーリズム協会(現:学びの森)理事だった頃に連載した、海の生物関係の記事をご要望にお応えして掲載します。
今見返すと、紙面の都合等で言葉が足りなかったりする箇所もありますので、少しお色直ししています。
全9話ありますので、3話づつ掲載しますね
美ら海どぅしぐわー ~国頭、海の生き物たち
今回は「群れ」のお話をしましょう。繁殖の為に群れるのは人も魚も同じこと。 多くの出会いの中からより良い遺伝子を残す為に吟味を重ね競い合い、傷付け傷付 くのですねぇ。。。(遠い目・・)
繁殖以外では、日々の生活の中でメリットのある群れ作りをします。餌を捕るため に群れるもの、捕られないために群れるもの、なんだか矛盾しているように思えま すがガーラのようなアジ類、ロウニンアジやツムブリカンパチ、マグロなどは囲い 込み漁をします。一匹では効率の悪い漁も群れれば楽に餌にありつける訳ですね。
沖縄民謡の谷茶前節にもあるようにミジュンやスルルーといった小さなイワシ類も群れてい ます。小さな魚が群れるのは、スイミーのように寄り集まって大きな生物に見せるためとか、集まって いれば少しくらい食べられても種として逃げ果せることができるためとか、説は色 々あってそれぞれに正しいと思いますが、ちょっと面白いのがドーナツ現象!
有名なのはゴンズイで、稚魚の頃は重なり合ったドジョウのように一つの玉にな って泳いでいます。玉のままあちらの餌場からこちらの餌場に忙しげに移動する様 が可笑しくてついつい手を伸ばしたくなりますが、背鰭と胸鰭に毒刺を持っていて 刺されたら大変!と尻込みする人も多くいます。
ところが、このゴンズイ玉のど真ん中にグーで手を突っ込んでみると・・「なん ということでしょう♪ゴンズイ達はドーナツのように手の周りで一定の距離を保っ て輪を作るではありませんか。(原注:これはクセになります)ミジュン(ミズン) もスルルー(キビナゴ)も同じ事をします。
捕食者がやって来るとその魚を取り囲んでしまいます。これによって捕食者は方 向感覚を失い、周りで激しく水音を立てながら泳ぎ回る小魚に圧倒され、アタック をかけるタイミングを逃しそそくさと逃げ出すしかありません。これは積極的な群 れの活用法で、先程の話の中の、捕食者にとっては効率の悪い一例ですね。稀にダイバーなどが「お魚 さんに囲まれて一緒に遊んだの~♪」と喜んでいることがありますが、たぶん幸せ な勘違いなのでしょう。。。。。残念!
海遊び・森遊び きじむなあ 服部美冬
H16/11
美ら海どぅしぐわー ~国頭、海の生き物たち
国道でたまに見かけるヒッチハイカーは無銭旅行の学生さん風がほとんどです が、沖縄で絶対に逆らえないのが「おばあ」。目が合ったら最後!運転手は催眠術にかけ られたかのようにブレーキを踏み、次の瞬間には助手席にお乗せして、目的地まで 延々身の上話を聞かされるハメになります。
魚の世界にも「ヒッチハイク」という行動がありますが、コバンザメなどは大 きなサメやクジラなどにぴったりとくっついて楽々生活をエンジョイしています ね。ダイビングをしていると稀にいつの間にか付いていた・・などという経験をするダイバーさんもいま す。
ダイビング中によく目にするパターンは稚魚が大き目の魚と一緒に泳ぐヒッチ ハイク行動。ガーラ類(ナンヨウカイワリやシマアジ等)の稚魚は大きなタマン (フエフキ類)などに寄り添って泳ぎ、捕食者から身を守っています。
ユーアカー(ヒメジ類)のように砂を掘って餌を捕る魚にはベラなどがしつこ くくっついて泳ぎ、ちゃっかりおこぼれに預かっています。ベラ類は食欲から先 に生まれたような魚なので、ダイバーが巻き上げた砂や動かした石等があれば必 ずやってきて「なんかない?」と覗いています。
ヘラヤガラなども時にはダイバーの陰に隠れながら移動して小魚を狙いますが、 ダイバーのような異様な物体が近づけば小魚も逃げてしまうので、あまり賢い選択 とは思えませんね。
ヒッチハイクをする側には益があるのですが、される側には害も無ければ益も 無いようです。近い将来「おばあ」なお年頃となる私としては、せめて小噺の一つでも仕入 れてドライバーさんを楽しませなければ・・・などと企む今日この頃だったりして。
海遊び・森遊び きじむなあ 服部美冬
H17/1
美ら海どぅしぐわー ~国頭、海の生き物たち
今年の冬は寒かったですねぇ~(すでに5月ですが)
世の中では沖縄(南の島)=楽園という都合の良い錯覚が蔓延していますが、 水温が高くて死んだ珊瑚や、水温が低くて死んだ熱帯魚、あるいは地震に津波等々の恐怖には常に頭の隅にあるものです。 本当の楽園はいずこ??
島国で地震大国日本は、同時に素晴らしい南北の自然に恵まれた国でもあり、良くも悪くも半々具合の振り幅が大きいワケですね。
さて、恋愛は人生における楽園期間とも言えますが、沖縄の魚達は本州よりも繁殖期 の長いものが多く、特にこれからの時期にはのべつまくなしあちらこちらで求愛 カップル達が観察できます。種類によってはグループで怪しげな行動を取ったり もします。
以前お話したホンソメワケベラは20m四方程度のテリトリー の各所に雌がクリーニングスティションを構え、雄はハーレム中の妻達の「店」 を巡回しながら求愛します。
人も魚もプロポーズの時はドキドキするものらしく、雄は体を震わせながら目当 ての雌を誘います。誘われれば悪い気もしない雌は恥らいながらも(・・・かどう かは知らないけど)体をS字に色っぽくくねらせてOKサインを出し、ハーレムを抜け出して沖 へとデートに出かけます。
卵が潮の流れに乗れる場所で、二匹は踊るようにルーピング(円を描くように回 転)しながら上昇して行きます。わずか10㎝程度の小魚が5m以上も! 文字通り、 天(海面?)にも昇るような心地なのでしょうねぇ。水面近くまで来ると二匹は素 早く精子と卵子を放出します。
ホンソメワケベラはクリーナーですから捕食者に襲われる危険が少ないので、 デートも気軽に楽しめるのかもしれません。デートを終えた雌はまた平然と「店」に戻り、 雄は次の妻をデートに誘います。繁殖期間中は延々とこれが続く訳で、甲斐性と体 力が必要な雄にとってはハーレム=楽園とは言い切れないかもしれませんね。
海遊び・森遊び きじむなあ 服部美冬
H17/5
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