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2014年5月 4日 (日)

海の仲間たち(Ⅰ):クマノミ・オニヒトデ・ホンソメワケベラ

 やんばるの森通信  抜粋記事

今から10年前、国頭ツーリズム協会(現:学びの森)理事だった頃に連載した、海の生物関係の記事をご要望にお応えして掲載します。
今見返すと、紙面の都合等で言葉が足りなかったりする箇所もありますので、少しお色直ししています。
全9話ありますので、3話づつ掲載しますね

海の生き物たち ~美ら海どぅしぐわー~

魚

 アニメのお陰でクマノミが災難に遭うという事件が相次いだが、そろそろブー ムも下火になったのか、捕れそうなクマノミがいなくなったのか、沖縄の歌の文句じゃ ないけど「黄金の花」に心を奪われた人の多いことったら・・・で、今回の話は クマノミ。

 大ヒットしたアニメ「ファインディング・ニモ(Finding Nemo」の「ニモ(Nemo)」はクマノミの仲間 ですが、正確にはカクレクマノミではなく、オーストラリアに住むアネモネフィッシュ(Eastern Clown Anemonefish)です

映画でもクマノミ一家はイソギンチャクに住んでいましたが、実はこの「 一家」の構成が(本当は)面白いんです。まず、一家の中で一番大きな固体が母親です。魚 の世界ではよくあることですが、母親が死ぬと次に大きな固体が性転換してメス になり母親になり、次に大きな固体が父親になるわけです。

イソギンチャク

 子供達は皆、押掛け養子で、卵から孵るとすぐに別のイソギンチャクを捜して 旅に出ます。外敵に襲われやすい小さなクマノミはイソギンチャクの毒に守 られながら健気に子孫を残すというシステムを繰り返しているのですね。産卵期 にイソギンチャクをそっと捲ると、沢山の卵が産み付けられているのが判ります。 直後はオレンジ。茶、銀、金と変化して約1週間で孵化します。運が良ければ一 つのイソギンチャクに産み付けられたステージ(時期)の違う卵の集団を観察することも できますよ。

 日本にいるクマノミはクマノミ・ハマクマノミ・ハナビラクマノミ・セジロク マノミ・トウアカクマノミ・カクレクマノミの6種類。

イソギンチャク

 国頭の海ではその全てが見られますが、水深もイソギンチャクの好みも違うの で同じ浜で全てを観察する事は難しいかもしれません。イノー観察やスノーケリ ングではどんなクマノミが見られるか、どんなイソギンチャクに住んでいるか観 察するのも楽しいですね。

*冒頭のニモはアニメ(物語)ですから、設定や生態はフィクションです
 ネズミのミッキーが犬のプルートをペットにしたり、アヒルのドナルドが服を着ていたりというのは、とても楽しい夢物語で現実ではないことは誰もが知っています

 海の中も同様に、お話と現実の違いを知れば、もっともっと夢が広がるかもしれませんし、案外現実の方が面白いかもしれませんよ

                                   H16/5                          

美ら海どぅしぐわー ~国頭、海の生き物たち

魚

 ゴッホの描いたヒマワリの様な、デフォルメされた太陽みたいなオニヒトデは、近 年になって人々に嫌われる存在になっています。その形態に不気味さを覚える原因は、 「悪」という刷り込みによる場合が多ようです。でも、何の情報も持たずに見つめれば、 案外ポップで可愛らしく見えるかもしれないですね。

 棘には毒があり、刺されれば猛烈な痛みを伴う様ですが、オニヒトデが好き好んで 襲ってくるわけではありません。異常発生をして珊瑚を食い尽くす行為も、オニヒトデ出 現以来100万年もの間繰り返されてきた自然の営みなのです。その都度、珊瑚礁は再生 を繰り返し成長してきたのでしょう。地球のサイクルが正常であれば、珊瑚は雑草の 様に着実に子孫を残せるはずですね。

イソギンチャク

 珊瑚礁は地球の大切な宝であり、それを破壊に導いているのは、埋め立て、護岸 工事、海水温の上昇、富栄養、化学薬品など、どこから見ても、人類が何らかの原因を作ってい る様に思えるのは私だけでしょうか?

オニヒトデ

 ダイビングなどのレジャー産業が盛んになったお陰で、オニヒトデが珊瑚を襲って いる直接的な映像が多くの人々の目に飛び込みました。結果、「オニヒトデ=悪」という とてもわかりやすい結論が出されてしまいます。とんだ濡れ衣を着せられたオニヒトデ の卵や珊瑚のポリプ以下の大きさの幼生は、逆に珊瑚に食われたり殺されたりしている と言うのに・・・。オニヒトデが生きる自然環境が本来の正常なサイクルであれば、伸びすぎたり、大きくなりすぎた珊瑚 の床屋さんの様な役割も担っているのです。

 お金が余っているのなら、珊瑚の植え付けや駆除に何億円使ってもいいけど、原因究明の方が先なんじゃない?人類と自然の共生 の為には、人間の都合や我を通すばかりではなく、折り合いも必要。近代化の利便性も自然も全てを 手に入れる方法は絶対にあるはず。(←他力本願?)

 まだまだ解明されていない自然界の生き物たち、どんな生命でもいらないものは無 いはずです。何かは何かの役に立ち、支え合い、みんなで命を繋いでいるのにね。

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美ら海どぅしぐわー ~国頭、海の生き物たち

熱帯魚

 小さな魚は大きな魚に食べられるという弱肉強食の世界で、ホンソメワケベラは 大きな魚に癒しのひと時を与える術を身に付け、しかも食事と仕事を同時にこな す要領の良い世渡り上手です。

 魚の世界では「ホンソメワケベラ・エステサロン」と言えばビッグネームで、 たまに他の魚の稚魚などが真似をしてちょっこっとバイト(?)をする事もありま すが、人間で言えば子供の「肩たたき券」のようなものでプロの技には遠く及ばな いようです。幸せ感はMAXですが、技術的には間に合わせの気休めといったところでしょうか?

 また、どんな世界でも有名になれば偽者が現れます。ニセクロスジギンポはホン ソメワケベラそっくりな体で客引きをしてお客様の体を食べてしまいます。 怒ったお客様は追いかけますが、すばしこいニセクロスジギンポはさっさとサンゴや 岩穴に逃げ込んで「ごちそうさま♪」

 そこまでの人気ですから「ホンソメワケベラ・エステサロン」はいつもお客様で いっぱい。特に水温の高い夏から秋にかけては寄生虫も付き易い時期なので、沢山 の魚達がお行儀良く順番待ちをしています。
海の中で、お魚たちが行列して待っている姿なんて、想像するだけでも楽しいですよね♪

ホンソメワケベラ
上がホンソメワケベラ、下がニセクロスジギンポ、目つき以外は殆ど同じに見えます。

 魚たちは自分の順番が来ると進み出て「今日は鰓が痒いのよ~」「歯に何か挟まったみた い」とか、「背中の・・あーそこそこ!」と体を預けます。 魚にも感情表現のようなものがあり、体色を変化させますが、この時の魚達は皆一 様にゆったりと水中に漂いながら幸せ色を輝かせます。あまりの気持ち良さに我々 人間が近づいても逃げ出す事すら忘れている個体もいます。

 このようなエステサロン(クリーニングステーション)は数メートル間隔に離れ て営業していますが、小さな雌が営むお店はあまり人気が無く、忙しい時期には大き な雌のお店に借り出される事が度々です。
「今日はヘルプ頼まれてるの~」と、経験を積み、徐々に腕を磨いてゆくのでしょうね

なんだか人間界と似ていませんか?

                                     H16/9
記事:海の仲間たち 全9話
Ⅰ) クマノミ・オニヒトデ・ホンソメワケベラ

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